1 長時間労働に対する関心の高まり
日本人は勤勉な民族であるとよく言われます。近年は短縮されつつあるものの、我が国の労働時間は世界各国と比較して依然として長時間に及びます。しかし、長時間労働が労働者のワーク・ライフ・バランスを崩し、最近でも、大手広告代理店企業の新入社員が過労自殺に追い込まれたケースが大きく報道され、長時間労働に対する社会の関心はますます高まっています。国も、過重労働に対する対策を強化しつつあり、厚生労働省は、平成27年4月、東京労働局と大阪労働局に、悪質な長時間労働など法令に違反する疑いがある大規模事案等に対応するための専従組織として、「過重労働撲滅特別対策班」(通称「かとく」)を設置しました。この「かとく」の構成メンバーは、全員労働基準監督官であり、特別司法警察職員として違法な事業者を検察庁に送検する権限ももっています。
このように、今や、長時間の労働を苦にしない「モーレツ社員」を美風とする時代は終わり、労働者のワーク・ライフ・バランスを確立し、良好な職場環境を維持することが、労働者にとっても、そして企業にとっても、重要な課題となっています。この点、舞台照明・テレビ照明の業界は、通常の9時から5時の会社とは異なり、仕事の時間は不規則となりがちです。しかし、個々の人があってこその会社であり仕事ですから、労働時間についてより高い意識を払うことが重要であると考えます。
以下、本コラムでは、労働時間に関する法規制について、あらましを説明したいと思います。