ニューヨークエッセイ
照明家として関わった作品のデザイン会議で、美術家が提案する装置のアイディアに「フル天井(一切の隙間なし)」があると、どうしても内心で「えーっ…」と思わずにはいられませんでした。すでに生まれたストレスを腹の中で静かに解消し、最善策を絞りだそうとしている矢先に美術家から「小道具のランプを使えばいいじゃないですか」などという軽い一言が発せられると、匙を投げそうになります。確かに、小道具のランプが非常に効果的な光を演出することは往々にありますが、ランプから発せられたように見せかけた光の演出と天井のように見える装置の両立は、美術家と照明家両者の歩み寄りにより可能なはずで、それを立証したくて美術デザインを始めました。