ニューヨークエッセイ
アメリカのエンターテイメントがもつ「何か」に惹かれたのが、私の渡米の理由でした。その「何か」とはこの国の数ある長所が絡み合って生まれる特徴ですが、その1つに、作品を通して伝えたいメッセージが明確であることが挙げられます。たとえば、フランクリン・ジェームス・シャフナー監督による1970年の映画『パットン大戦車軍団』では、巨大な星条旗を背景に演説を行うジョージ・スミス・パットン・ジュニアを描いたオープニングシーンが印象的でした。主人公の家父長制的な考え方と愛国心が視覚的と聴覚的に直球で表現された場面により、観客は彼の生き様を描いた映画全体を瞬時に把握したといっても過言ではありません。アメリカでは、“Whatʼs the point? (何が言いたいの?)”に一言で答えることのできる制作者である必要があります。