ニューヨークエッセイ
ヤング・ジーン・リー氏作の演劇『ストレート・ホワイト・メン』の初日を終え、デザインチームが劇場から去ってしばらく経ちますが、今でも心のどこかで常にこの演劇のことを考えている自分がいます。アジアン・アメリカン女性戯曲家初のブロードウェイデビューとなった賢明で鋭いこの作品は、コメディの仮面をかぶった臨床的人文学ゲームと表現しても過言ではないでしょう。一度見ると戯曲の問いかけに対する答え探しで頭がいっぱいになるのは私だけではないようで、「観劇後は話すことがいっぱいになるよ」と、ニューヨーク・タイムズ紙の批評でもお墨付きです。
リー氏にスポットライトを当てた別の記事が、初日の数日前に同紙に掲載されていたことを知りました。1974年に韓国で生まれ2歳のときに両親とともに渡米した彼女の生い立ちから、ワシントン州にある小さな白人ばかりの町でアジアン・アメリカンであるがゆえに差別を受け続けた思春期、アジア人生徒も多く通うカリフォルニア大学バークレー校で初めて人間として扱われた衝撃、そしてシェイクスピア研究者から戯曲家への転身まで細かく書かれているその記事は、A4用紙10枚分にも及ぶ長さです。その中で彼女は「アジアン・アメリカンの脳はアジア人の両親に育てられたゆえに、脳が少し破壊しているってことに気がついたことない?それはどっちかって言うと、猿に育てられたようなもの。のろまで英語もろくに話せず、邪悪なほど無知なくせに、世間体と地位だけにこだわっている猿。」と言っています。うわ、すごい言い方、と一瞬驚きましたが、これは彼女だからこそ言える白人社会のアジア人に対する本音だと私は解釈しました。