ニューヨークエッセイ
アメリカで生活していると、日本にいたときよりも「死」との距離があるように感じます。そういえば、日常の雑談中に死について話す人がほとんどいないかもしれません。引っ越しを手伝っていて「私が死んだらこれ全部あなたにあげるわ」とか、綺麗な雨の音に感動して「雨の日に死にたい」と、日本では気軽に会話に上がることをアメリカで話すと、「縁起でもない、そういう話はやめてくれ」みたいに拒否されることがあります。とはいえ舞台芸術を生業としていると、物語の中で人の死が頻繁に描かれるので、私はどちらかというといつも死について考えているように感じます。こんなに楽しい時間も気の合う仲間も、いつか私から(もしくは私が)離れていってしまう寂しさが頭の隅に常にあり、なんだかパーっと騒げない自分が少し嫌になるときもあります。