ニューヨークエッセイ
親しい友人がニューヨークへ来るというので、私からのプレゼントの意味を込めて、まもなくオープンするブロードウェイ劇場での演劇のチケットを2枚購入したのは、公演日の約3カ月前でした。演出家も作曲家もこれまでにいくつもの傑作を生み出した巨匠で、出演者の中には大変有名な映画俳優も起用されていて、友人を招待するのに間違いない作品のはずでした。公演当日、仕事を切り上げて急いて友人との待ち合わせ場所に向かい、時間がギリギリだったのでそこからタクシーに乗って劇場へ行きましたが、劇場に到着するやいなや何かがおかしいことに気がつきます。劇場前の人だかりの先にあったのは、セキュリティ・チェックでもチケットのもぎりでもなく、閉ざされた会場の扉に貼られている一枚の張り紙です。そこには、「この公演はクローズしました」とありました。驚きと同時に、友人が道中のタクシーの中で「この公演のことを酷く書いているレビュー(批評)を読んだ」と話していたことを思い出します。そこまで酷い公演だったのか今はもう知る由もないですが、私、消費者の一人としては、チケット購入者に公演を予定より早く終了することを連絡しなかったプロダクションが優良だったとは言い難く、ここまでのタクシー代も返してくれ!と言いたいところです。