ニューヨークエッセイ
アポロ11号の月面着陸と無事生還から今年で50年というニュースは、この夏アメリカのメディアで大きく取り上げられていました。「月面はアメリカ合衆国南西部の砂漠のようだけど、これは劇的に美しい砂漠だ」と、人類初月面に降り立った宇宙飛行士ニール・アームストロング船長が話しているビデオを見ました。アポロ11号から全世界にテレビ同時中継された月面に降り立つ様子や、宇宙から見た青く輝く小さな惑星地球の映像を、街頭のブラウン管にかじりつくように見入る50年前の世界中の人々の表情もとても印象的でした。インターネットにより個人で好きな時間に好きなコンテンツを選んで視聴できる現代とは少し違う、人種を超えた連帯感のような感動を50年前の映像から感じます。あの頃は、「2020年までには民間人が月に旅行できるかも」などと本気で夢見ていた人も少なくなかったと思いますが、結局アポロ11号の任務を遂行したアームストロング船長とバズ・オルドリン月着陸船操縦士、そしてマイケル・コリンズ司令船操縦士を含め、月面に降り立った人類は未だに十人にも達しません。50年という月日が経っても、彼らの体験は彼らだけが共有するまだまだ未知の世界です。