ニューヨークエッセイ
一つのことを選択するということは、それは同時にほかの何かを失うことなのかもしれません。たとえば、日本人の私はアメリカでの新しい経験と出会いと引き換えに、日本での時間を失っています。今の年齢になるまではあれもこれもすべてを得たいと欲張りでしたが、自分の長所と短所や過去の決断などを客観的に見据えることにより、以前よりも標的が狭くなってきたような気がします。照明業務を通じて演出家や同業者、仲間と通じ合うこと、そして周囲の人達に私の照明で喜んでもらいたい一心で生きているような気がします。もちろん、毎回の仕事で手応えを得られるわけではありませんが、だからこそ、同じ視点でものを捉えている人との繋がりに心が震えると同時に、異なる視点をもつ人から学ぶ機会を有り難く感じます。