協会はいかに在るべきか
公益社団法人 日本照明家協会 会長
勝柴 次朗
あけましておめでとうございます。
昨年1月の協会誌「巻頭言」では、その夏にオリンピック・パラリンピックの開催が予定される中で、『文化・芸術の担い手として』という題で私たち照明家の在りかたについて述べさせていただきました。しかし、それを書いた時点ではまったく予測もしていなかった大規模な「コロナ禍」がその後全世界に広がり、私たち照明家も、歴史上まったく経験したことのない、未知の事態に遭遇することとなりました。世界中に蔓延したコロナ禍(新型コロナウイルス感染症)は、私たちの活動の場である舞台・テレビの分野にも大きな影響をもたらしました。特に舞台においては、昨年の春から夏にかけてほとんど全ての公演が中止または延期となり、舞台を生業とするアーティストやスタッフは、経済的にも心理的にも深刻な打撃を受ける結果となりました。私自身も、昨年の春から夏にかけて多くの業務がキャンセルや延期となり、大きな影響を受けることになった者の一人です。
当協会の事業においても、本部事業や支部事業の多くが中止や延期を余儀なくされ、協会誌も6月から休刊せざるを得ない状況となりました。そのように普段どおりの活動が難しくなるなか、この未曾有の事態に協会としてどのように対応していくべきか。これは理念的にも実務的にも、なかなか簡単には結論できない大変難しい問題です。しかし少なくとも、1年前にここに書いたとおり、私たち照明家は「文化・芸術の担い手」であるということは間違いのないことだと思います。そのような思いから、コロナ禍における舞台芸術の支援を旨とする「演劇緊急支援プロジェクト」に、当協会も参加いたしました(日本美術家協会、日本舞台音響家協会、日本舞台監督協会なども同プロジェクトに参加しています)。そして、このプロジェクトの呼びかけに応じ、文化庁補助金『文化芸術活動の継続支援事業』への舞台関係者の申請を支援するため、協会内に新しく「支援対策室」を立ち上げ、他業種の各団体とも協力して、全てのフリーランスの皆様を対象とした「事前認定(確認番号発行)」の業務を行いました。このような業務は、当協会の運営史上でも例のない、新しいタイプのものです。
長く続くコロナ禍も、先行き不透明ながら少しずつ収束の様相を見せ始め、協会誌も1月号からこうして復刊でき、年度末にかけての中央講座・地域講座も各地で実施できる見通しです。普段どおりの事業を再開できることはもちろん喜ばしいことではありますが、今回のコロナ禍を通じて、私たち照明家の社会における役割が、少し変わってきているのかも知れないと感じ始めています。もしそうだとすれば、日本照明家協会の在りかたも、何らかの変容をしなければならない時期を迎えているのかも知れません。
当協会は1973 年に社団法人として設立され、再来年には設立50 周年を迎えます。その当初から長く継続してきた事業を守っていくことはもちろん大切なことですが、社会全体が大きな変化をしているのだとすれば、必要に応じて当協会においても組織としての基本方針を再検討し、継続してきた事業の抜本的な見直しや、たとえば今回の「支援対策室」のような、新しく求められる事業を立ち上げていくなど、柔軟な変化を考えていく必要があるのかも知れません。
今年は、そのような変化の可能性も見据えながら、幅広い皆様から多くのご意見を伺いつつ、慎重に協会運営を進めて参りたいと思います。模索しながらの協会運営がまだしばらく続くことは避けられないと思いますが、どうか皆様のお力を引き続きお貸しくださいますよう、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。