1 はじめに
前回(第41回)の「梅ちゃん先生の法律相談」では、フリーランスの法的な位置づけについて概略を説明いたしました。今回は、フリーランスと労働基準法等の「労働者」の違いについて、詳しく見ていきたいと思います。
前回ご紹介しましたが、多様な働き方が存在する現代において、フリーランスは重要な意義をもっており、政府から、2021年3月に「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」(フリーランスガイドライン)が策定・公表されました。
フリーランスガイドラインにおいては『「フリーランス」とは法令上の用語ではなく、定義は様々であるが、本ガイドラインにおける「フリーランス」とは、実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者を指す』と説明されています。通常、フリーランスは、業務を発注する事業者等との間で、業務委託契約や請負契約を結び、その契約上の義務の履行として業務を提供する存在であって、雇用契約を締結して労務を提供する労働者とは異なります。ゆえに、労働者と事業者との関係を規律する労働基準法等の労働関係法規は適用されず、フリーランスは、原則として、労働法の保護を受けることはできません。
もっとも、「フリーランス」だからといって、それで全く労働法の規制による保護が受けられないというものではありません。フリーランスが法律上の「労働者」と評価できる場合、フリーランスという名称に関係なく、労働法の規制の適用があり得ます。そして、「労働者」に該当するか否かは、実態に即して客観的に判断されます。発注事業者とフリーランスの方の契約形式としては業務委託契約等であって雇用契約ではないとしても、実態として「労働者」ならば、労働法の規制が適用されるのです。