ニューヨークエッセイ
「演劇シーズン」というものがいつからいつまでと決まっているわけではないですが、春の終わりは業界が一区切りつく感じを受けます。それはこの時期、1年に1度、トニー賞やドラマ・デスク・アワードの受賞者が発表されるからかもしれません。業界も多様化し、オフシーズンを狙った作品や夏の演劇フェスティバルの存在が大きいのも確かです。しかし歴史的に、ブロードウェイの規模の大きなミュージカルや演劇の開幕は、サンクスギビングとクリスマスホリデーの集客を目指した秋か、トニー賞審査時期に標的を合わせた春か、と聞きます。トニー賞に関しては雲の上の巨匠たちが受賞するものだと、ステレオタイプな印象をもっていましたが、昨年あたりから巨匠たちに混じって随分同世代の知り合いがノミネート、また受賞することが多くなってきました。表彰台に立つ喜びにあふれた彼らの笑顔と、彼らから聞く正直な受賞の感想から、作品に対する主観的な感想はこの際どうでもよく感じ、選ばれたクリエーターたちが1つのゴールに向かって協力しあった事実を微笑ましく思います。