ニューヨークエッセイ
「ラママは俺がこのキャリアをスタートした場所だ」と自慢げに話す照明さんを少なくとも3人知っています。“ラママ”とはアフリカン・アメリカンの舞台芸術家、エレン・スチュアート氏によってマンハッタンの下町に1961年に創立されたオフ・オフ・ブロードウェイの劇場コンプレックス、La MaMa Experimental Theatre Clubのことです。ラママが原点だと話す彼らの一人は30代、残りの二人は60代。どの武勇伝にも共通するのが、皆大学を卒業してまもない頃、収入も技術もあまりなかったけれど舞台照明に熱中した良い時代、ということです。ドアをたたいて「ここで働かせてください!」という飛込みが許された、数少ない劇場の一つだったようです。2011年スチュアート氏他界を経て、現在は299席のエレン・スチュアート劇場と99席から130席のダウンステア劇場に加え、ギャラリーと3つのリハーサル・スタジオを持ち合わせた施設です。